警察に関する情報


★当日の現場指揮に関して★
・ミスは無かった


★webニュースより当日の対応の流れ★

「自爆型の制圧困難」

 降り注ぐガラス片に逃げ惑う人々、負傷した警察官が次々と運びだされる。十六日、名古屋市の「軽急便名古屋支社」で起きた立てこもり爆発事件は、人質の同社支店長、突入準備中だった警察官、容疑者の三人が死亡し、四十一人が重軽傷を負う衝撃の結末に。契約業者の男がガソリンをまき、オフィスを恐怖が支配した三時間。人質七人が解放され、警察の説得が実ったかに見えたとき、悲劇は起きた。男は捜査員の説得に耳を貸さず、火を放ったとみられる。

 「捜査員を下げろ。警官の姿を見たら火を付ける」。別府昇容疑者(五二)が叫び、七人を室外に出し、扉を再び閉めると、突然炎が見えた。「残された人質が危険だ」。愛知県警は突入態勢に入ろうとしたが間に合わなかった。

 別府容疑者が同支店にポリタンクを台車に載せて侵入したのは午前十時すぎ。事務所の中央で一個をけ飛ばし、液体が流れ出した。

 別府容疑者は「女は貴重品を持って出て行け」と女性社員らを解放。支店長の吉川邦男さん(四一)=死亡=だけを相手とし、残る七人は会議室に閉じ込めて携帯電話を取り上げた。

 間もなく県警の捜査員約二十人がビル内に駆けつけ、説得係の警部がドア越しに「開けてくれ」「お茶を差し入れようか」と呼び掛けたがほとんど無視。「七月から九月の代金を払え」との一点張りだった。

 吉川さんは支払い要求に応じるよう本社と掛け合った。正午すぎ、同社が要求額を指定の口座に振り込むと、別府容疑者の態度が軟化した。

 「じゃ、一時ぐらいには解放するわ。捜査員全員下げろ。一人でも警官の姿を見たら火を付ける」と通告。県警がいったん捜査員を遠ざけると、人質が一人ずつ解放された。

 だが、八人いるはずが七人しか出てこない。「再交渉しなければ」と説得係が近づいたとき、室内に火が見え、直後に大爆発が起きた。警察幹部は「犯人が自ら死傷することを覚悟した『自爆型』を制圧するのは極めて難しい」と話す。

 爆発直後、待機していた消防車、はしご車が現場に近づき一斉に放水を開始。四階からは男性三人がはしご車で救出され、消防隊員に抱えられながら救急車に乗り込んだ。一人は全身すすまみれで、割れた窓ガラスの内側からあえぐように身を乗り出し、救助を求めた。大量の放水でずぶぬれとなり、衣服はぼろぼろになっていた。

 飛び散った窓ガラスで百メートル以上も離れた路上にいた男性も負傷。通行止めにしたビル前の交差点に白いシートを敷いて設置した臨時救護所で、頭や足から血を流した七、八人が救急隊員から治療を受けた。

≪「無口だが文句多い」 別府容疑者≫

 名古屋市の軽急便本社で十六日夜、記者会見した村上一信社長(六六)は別府容疑者について「日ごろから勤務態度に問題が多かった」などと指摘した。

 同社長によると、別府容疑者は指定された集配時間を守らず、無断で一週間休んだり、突然連絡が取れなくなったりすることもあったという。客から直接クレームが付くことも数回あった。同社は出来高払いのため仕事を増やそうと別府容疑者に手配しようとしたが、「私は日曜日は休む」と拒否したという。

 「普段は無口でまじめだが、文句が多く仕事がやりにくい人」。同社関係者は別府容疑者をこう評する。配送の仕事をしながら新聞配達などで生計を立て、今月十一日に「辞めたい」と軽急便の仕事を断ったが、同社から買い取った軽トラックのローンも残っていたという。

 軽急便は広告などで会員を募り、それぞれを独立事業者と見立てて配送業務を委託。運送や集荷の出来高に応じて手数料が入る仕組みで、「配送内職」と呼ばれる副業ビジネスの一種だ。

 同様の業者は複数あるが、軽トラック一台で仕事を始められる気軽さから、不況に苦しむ自営業者などが空き時間を利用して参加するケースも増えている。半面、このビジネスをめぐっては、「事前に約束した収入が保証されない」などの苦情が各地の消費者センターに多く寄せられている。