名古屋のビル爆発

威嚇のため着火か

別府容疑者30万円持参、自爆の意思なし

 名古屋市東区のビル立てこもり爆発事件で、死亡した委託運送業別府昇容疑者(52)=同市中川区=が、人質から脅し取った約七万円とは別に現金約三十万円を持参していたことが、愛知県警捜査一課と東署の特捜本部の調べで分かった。また別府容疑者が着火したのは、人質七人を解放後、捜査員が再び交渉を始めた直後だったことも新たに判明。特捜本部は、別府容疑者が逃走を計画し、自爆する意思はなく捜査員を威嚇するために火を付けたのが爆発につながったとみて調べている。

 調べでは、別府容疑者はビル四階の「軽急便」名古屋支店の事務所にガソリン入りのポリ容器や発炎筒などを持って押し入り、男性社員八人を人質にとってろう城。ポリ容器をけり倒すなどして中に入っていたガソリンをまき散らした。その後、死亡した支店長=当時(41)=一人を残し七人を解放。捜査員らはその際、別府容疑者の要求で三階に下がっていたが、再び事務所入り口ドアに近づいて交渉を始めた。説得役の捜査員が別府容疑者を落ち着かせようと「(人質七人を)解放してくれてありがとう」などと話しかけていたところ、突然、すりガラスごしに火が見えたという。

 現場検証の結果、現場では発炎筒のほか簡易ライター二個などが見つかっているが、関係者によると、別府容疑者は着火する際、両手を大きく動かすしぐさをしていたとされる。この動作からライターの火とは考えにくく発炎筒を使って火を付けた可能性が高い。

 また、別府容疑者は人質を解放する前に脅し取った約七万円とは別に、現金約三十万円を持っていた。別府容疑者が事前に逃走資金として用意していたとみられる。別府容疑者の車はガソリンが満タンにしてあった。

 特捜本部は別府容疑者に自爆の意思はなく、気化ガソリンの危険性への認識が薄かったことが大きな被害をもたらしたとみて慎重に調べている。