これまで、民事訴訟によって、軽貨社を始めとする独立開業ビジネス業者が完全敗訴という事例は多数存在するが、内職商法と同様に警察の摘発と有罪判決を受けたというのは非常に珍しいケースだ。 しかし、軽貨社の被害事例は本紙にも多数寄せられており、それによると「250万円近く取られて、実際に斡旋された仕事は説明会のときと雲泥の差」、「数百万円のローンと半ば強制的に購入させられた使いもしないポケベルだけが残った」という今回、詐欺と断罪されたM被告のケースとさほど大差がない。それにも関わらず最大手はなぜ、摘発されないのかという素朴な疑問が浮かんでくる。一体、どうしてなのだろうか。 別の元幹部によると「私が在籍していたころでも警察に(詐欺罪で)告訴すると全国各地の支店、営業所乗り込んできた被害者は多数いるし、荒っぽい性格の被害者は暴力沙汰になりかけたこともある。しかし、軽貨の場合、そうしたうるさ型の被害者や弁護士を立てて交渉に臨む被害者らには、金で済ませていたため刑事事件まで発展しなかったからだ」と証言。 この元幹部は軽貨社在籍中、「業務として、被害者らに金を弁済する役目をしたことがある」といい、「例えば被害額が約200万円なら、全額そっくり返す。だから『何も悪いことはしていない』というのが軽貨の論理だった」とも証言。 もちろん、うるさ型でもなく、弁護士にも司法(民事)にも訴える方法も知らず、知っていてもその資金もない圧倒的に多くの被害者はそのまま、泣き寝入りである。 ある運送事業者(一般貨物)は「うちでも『軽貨に騙された』という人が面接にやってきて、気の毒なので採用と同時に軽トラも買い取った。しかし、これだけ詐欺まがい、悪徳として有名なのにどうして新たな被害者が出るのだろう」と疑問を呈する。 その答えは、「多くの被害者は、サラリーマンの中高年リストラ組などで、営業ナンバーのことすら知らない業界をまったく無知な人。少しでも、業界知識を持っていれば、説明会に行ってもうさんくさいと見抜かれる」(軽貨急配元幹部)とコメントしている。 今回、詐欺罪に問われたM被告のケースと差異などを軽貨側に尋ねたが、「担当から回答する」と言ったまま、今日まで何らコメントを発しなかった。 何かと問題にされながらも、新たな被害者を生み続けている軽貨物の独立開業ビジネス。今回、詐欺と断罪された意義は大きく、同ビジネス業界に新たなくさびを打ち込んだ歴史的な判決といえるだろう。